イギリスが7つの海を制し、栄華を誇ったビクトリア朝(1837~1901年)。その時代に植民地だったオーストラリアやカナダには入植時代の生活を再現した野外博物館がある。当時の町並みを再現し、それぞれの施設で当時の職業を演じる人がガイドとなって説明してくれる。
オーストラリア・バララットのソブリンヒル
ビクトリア州にあるバララットは1850年代のゴールドラッシュ時代に金が出て栄えた町。当時の目抜き通りだったバララットイーストを再現したオープンエアミュージアムがソブリンヒル。 ビクトリア時代の建物が並び、当時の衣装を着た人々が行き交い、馬車が目の前を通るのがなかなかシュール。メインストリートは鍛冶屋、印刷、写真館などが並び、それぞれ定期的にデモを行っている。ベーカリーが人気というが、ここの施設に2度行ったがタイミングが合わずパンにありつくことはできず。スピードウエルストリートは住居や薬局、学校など普通の生活がある通り。
金鉱を採掘していた坑道に入る地下鉱山見学ツアーでどうやって採掘するかがわかるほか、採れた金を精錬したり鋳造するデモンストレーションがあるので、当時の錬金術の一連の流れが見られる。ここのメインイベントは大人も子供も楽しめる砂金採り。運が良ければ小さい砂金が見つかる。金に関する博物館も併設。
メルボルンからソブリンヒルへは、ワイルドライフパークなどとセットになったツアーがある。バララットの町も近代化が起こらなかったのかと思うほどレトロ。
カナダ・アッパーカナダビレッジ
カナダ、オンタリオ州、首都オタワから90km、車で1時間15分にある1860年代の暮らしを再現したオープンエアミュージアム。19世紀のカナダの暮らし、といっても当時イギリスは親英アメリカ移民とイギリス移民が多いアッパーカナダ(現オンタリオ州)とフランス系のロワーカナダ(現ケベック州)に分けて統治。そのため、オンタリオ州にあるこのミュージアムも親英派、イギリス系の人々の暮らしを見る施設ということになる。
セントローレンス川の水路と人工湖建設により水没した村々から建物を移築。当時の製法を見せるチーズ工房やベーカリー、ホウキ店や雑貨店、製材場、ホテルなど40軒が立ち並び、それぞれ当時の衣装を身につけたガイドが当時の人になり切って説明してくれる。ビクトリア時代のアフタヌーンティーも提供するというウイラードホテルがあったが時間がなく未体験。
水路と湖建設にあたって、1958年に水没したのは10の村。そこにあった建物を移築して、1961年に野外博物館として観光資源に生まれ変わらせたのは本当に素晴らしい。
カナダ・キングストンのフォートヘンリー
フォートヘンリーは街並みの再現ではなく、かつての要塞を博物館として公開している。この要塞があるキングストンは、英国統治下のカナダで1841年から1844年まで首都だった町。川向こうはアメリカという立地で、1812年には米英戦争も勃発、1837年に要塞を設置したのでした。
今では当時の様子が再現された博物館として、士官から下級兵士までの宿舎などが見学できる。ここのメインイベントはギャリソンパレードという衛兵による行進と、最後に放つ大砲射撃。夜はゴーストツアーも行われています。
キングストンは大学も多い学生街。そのため、ここでガイドしてくれる衛兵たちは学生バイトも多い。聞いたら当時の役柄を演じるの楽しいって言ってました。
かつてオーストラリアのシドニー郊外にあったオールドシドニータウンも同じようなコンセプトで運営してたのですが閉鎖、再オープンの噂もありながら、未だ見通しが立たず。アメリカ・ボストン郊外のプリマス・プランテーションも入植時代の英国人と先住民の生活を再現した生活史博物館ですが、行ったのが昔すぎてポジの写真しかありません。
アフタヌーンティやシャーロック・ホームズ、ウイリアム・モリス…ビクトリア時代の文化、日本人大好きですけど、日本でポピュラーなビクトリア朝文化は上流階級のカルチャー。上記の施設は、ビクトリア時代の植民地での普通の生活が見られるところです。