1月に福島県に行きました。浪江町や双葉町など、今も多くが帰還困難区域になったまま。それでも少しずつ復興施設ができています。双葉町にある福島県の施設、東日本大震災・原子力災害伝承館の隣にある、双葉町産業交流センターの売店には浪江のお酒がたくさん並んでいました。
10年を経て浪江町で酒造りを復活した鈴木酒造店
でもラベルを見ると山形県長井市になってる?なぜ?と思いながら、道の駅なみえに行って、その理由がわかりました。浪江町の地酒を作っていた鈴木酒造店は、東日本大震災と原発事故で蔵を失いました。故郷を離れて、山形県長井市で酒造りを続け、2021年、浪江町に道の駅ができたときに新しい生産拠点を作り、今では2箇所で酒造りをしているそうです。鈴木酒造店は、江戸の天保年間からの歴史がある歴史ある浪江の酒蔵。奇跡的に家付酵母が残っていたため、避難先の山形で酒造りをすることになったそうで、本当に奇跡としか言いようがありません。
いくつか鈴木酒造店についての記事。
もともとあった酒蔵は地図上から消滅
鈴木酒造店の元の住所を調べたら、Google map上にない。存在した住所が整地されたせいなのか、もはや存在がなくなっている。Googleのスクショは貼れないのですが、検索しても出てきません。
現在の住所は道の駅なみえにある「なみえの技なりわい館」内になるので、現在のストリートビューには近くの国道114号までしか出てきませんが、その様子の変化に驚きます。
2022年6月現在
2013年3月。それより以前のストリートビューはなし。
もうこれ違う場所でしょう。。2015年までは以前の姿でしたが2021年にはほぼ現在の姿に。国道沿いにあった立派なお宅も更地になり、そこに復興施設が。
震災で米農家さんも失うなか、10年もの月日、酒造りに挑んできた鈴木酒造店。もはや軽々しく語る言葉はありません。鈴木酒造店の道の駅なみえのなみえの技・なりわい館への入居も公募事業者として応募した形だそうです。
とにかく、道の駅なみえで買った、鈴木酒造店のお酒。種類はたくさんあったのですが、選んでいる時間がなくて、純米大吟醸の山形・長井蔵のものと浪江蔵のものを買いました。
酒蔵は関係ない余談ですが、帰還困難区域が解除された途端に固定資産税がかかるのだとか。国は特定復興再生拠点区域を指定したところから先行して除染作業を行ってきました。この「特定復興再生拠点区域」にある家屋を公費で解体するのは解除から1年という期限付き。浪江町ではこの申請の締め切りが2024年4月1日。先祖代々守ってきた土地を汚染し、避難させ、家を壊し、復興の名の元にその先にできる多くが最先端の研究施設。人々の暮らしを何だと思っているのでしょうか。
奥能登、珠洲市の宗玄酒造
宗玄酒造は有名な酒蔵で、選りすぐりの酒蔵を扱う近所の酒店でも扱っていて、無濾過生原酒を飲んだときから大ファンになってしまいました。元旦の地震には本当に驚き、宗玄さんだけでなく、Xで流れてくる能登の酒造の被害に胸を痛めていました。当時の被害や動向がまとまっていたのがこちら。
2月6日にTBSで報道された被害状況。動画で見るとリアルに伝わります。
2月から「復興の酒」としてさまざまなお酒を数量限定で出してきました。第二弾の、手作業による袋吊りの無濾過生原酒を手に入れることができました。宗玄酒造のこの企画のすごいところが、売上の一部を珠洲市に寄付していること。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」のまさに「三方良し」!素晴らしいです。
宗玄の無濾過生原酒。
もったいなくて飲めないと思ったものの、無濾過生原酒は早めに飲んでと書いてあるので、飲みました。濾過してないため、香りも味も濃いめで本当に美味。油の乗った魚と合うのです。
今はネットでも宗玄のお酒、一部購入できます。楽天などで販売している酒のこんちきたいさんは自らも被災されたのに、「酒蔵に比べたらこれくらいでは被災したなんていえない」と頑張って石川のお酒を売っておられます。震災直後、価格を釣り上げるところもあったのですが、とても良心的なお店です。
酒のこんちきたいの商品をみてみる能登杜氏は岩手県の南部杜氏、新潟県の越後杜氏、兵庫県の但馬杜氏とともに日本四大杜氏といわれる酒造りの匠集団。そしてそんな能登の被害をみて、地域を超えて民間の支援が集まったのも素晴らしいと思いました。
一般市民ができること。作り手の想いに気持ちを馳せ、感謝しながら大事に飲むことではないかと思っています。
飲んで応援!復興、復活のお酒