オーストラリアの未輸入クラフトジンを試してみた

雑記

 オーストラリアのジンやウィスキー、ビールなどクラフトドリンクを紹介するAustralian Craft Beverages Showcase 2021に参加した。コロナで開催が延び延びになっていたものの、10月にやっと実施されることに。

 日本のインポーターがオーストラリアの商品を持ち込んだほか、インポーターが決まっていないメーカーはタスマニア州・ニューサウスウェールズ州・ビクトリア州・南オーストラリア州の各州政府がブースを出して紹介する形。

コロナ対策も万全
各ブースで試飲

 個人的に好きなジンを中心に気になったドリンクを紹介。ジンは大麦やライ麦など農作物アルコールをベーススピリッツとして、ジュニパー(西洋ネズ)で風味付けが基本なので、そのほかの香りに何を使い、どうブレンドするかがポイント。

ニューサウスウエールズ州

 バイロンベイの内陸にある熱帯雨林、ケープバイロン・ディスティラリーで作るジン、Brookie’s。ドライジンは、使用する25種類の植物のうち、17種は地域のネイティブプラントが使われています。アニシード、シナモンマートル、フィンガーアンドブラッドライムなど。爽やかに仕上がってます。

 スロージンはドライジンに9ヶ月以上漬け込んで抽出したデビッドソンプラムを使用しジンで甘め。トニックウォーターを入れると飲みやすく、美味。デビッドソンプラムはオーストラリア原産のスーパーフード。オーストラリアではクッキーなどにも入っていたりします。

バイロンベイの
ボトルがかわいい

 シドニーにある作り手のPOOR TOMSのドライジンは、ジュニパーをベースに青リンゴやカモミールのほか、オーストラリアネイティブのストロベリーガムリーフを入れているのがユニーク。香りが後から来ます。イチゴを入れたストロベリージンは結婚式のために作られたピンク色のジンで華やか。ジンホールというバーが6 Chalder Ave, Marrickville NSW 2204 にある。なお、シドニーのマリックビルはバッチブリューイングカンパニー、ソースなどの人気のビール蒸留所も集まるホットなエリア。

 サウスコースト・ディスティラリーのサブライムジンはカルダモンとレモンマートルの香り、タンポポの根の甘さと苦さを加えた、個性的だがくせになる味。カルダモンがはっきりしている。

南オーストラリア州

 ボトルがおしゃれなPROHIBITIONのジン。PROHIBITIONとは禁酒法のことで、その時代の写真が浮かぶボトル名前も皮肉が効いている。琥珀っぽい色のシラーズバレルエイジドジンは、バーボンからスコッチウィスキー、最後にはバロッサバレーでシラーズを入れていたアメリカンオークの樽で、9-12ヶ月熟成。琥珀っぽい色とバーボンの香りも感じる香り高いジン。       

 RED HENのウルトラバイオレット・ドライジンもユニークな一品。トニックを入れるとピンク色に変わり、バーでは受けること間違いなし。この紫色の正体はバタフライピー。ハーブティには使われていましたがついにジンにも!アントシアニンが含まれ、抗酸化作用があるとか。ジンも甘めで女子受けしそう。

ボトルがカッコいい
ウルトラバイオレット・ドライジン、トニックを入れるとピンク色に

タスマニア州

 オーストラリアの食の宝庫、タスマニア。ワインも有名だが、水がきれいで、大麦が採れて、ピート(泥炭)もあり、ウイスキー造りには適しており、最近ではウイスキー界でも知られているのだとか。

 さて、ターナースティルハウスのTHREE CUTS GIN。カリフォルニアでワインを作る家系に育ち、ウォール街の元エリートが創業した蒸留所。香り付けにはタスマニアンライム、コリアンダーやホワイトペッパーコーンのほか、バラの花びらを入れているのがアクセント。琥珀色のジンは、ワインを入れていた樽で熟成。

タスマニアは
こちらはヴァイアンドカンパニーが輸入しているタスマニア、マクヘンリーのジン

ビクトリア州

 ワイン産地で知られるマレーリバーに近い、ビクトリア州のサンレイシア地区にあるサンセットジンは、サンマスカット、オレンジ、アーモンドをブレンドして蒸留し、レモンマートルやペッパーベリーなど地元産のハーブを添加、仕上げにジュニパー、コリアンダーシード、カルダモンも加え、独特の香りを出している。

 メルボルンのサバーブにあるブランズウイックエーシズは食事と飲み物を楽しむ仲間が、妊娠や健康の問題をきっかけにノンアルコールドリンク製造に取り組んだ。17世紀のレシピに従い、砂糖は未使用、使われているのはジュニパーに加え、レモンマートル、タスマニアンペッパーベリー、ワトルシードなどオーストラリアのネイティブプラント。アルコール特有のツーンとした感じがなくデリケートかつ香りが高い飲み物に仕上げている。こちらは未輸入ではなく、CONTEXTが輸入元。

サンセットジン、淡い金色がきれい
スペードとハートの2種がある。おしゃれ

ジンではないが気になったお酒たち

 南オーストラリア州のPOLKA DROPSのノンアルワイン、リリーピリーキュベスパークリング。ノンアルや低アルコールは、ビールだけでなく、ワインでも新しいトレンド。ワイン作りの経験を活かし、11種類の白ブドウをアルコールを除いた後に絶妙にブレンド。オーストラリアのネイティブボタニカルのリリーピリーのエキスも加わり、ノンアルコールなのに酵母のような香りがする。ぜひ日本のホテルにも取り入れて欲しい。

アルコール度0.0%ながら表記はDe-Alcohol
オーストラリア人が大好きなリキュール、ビターズ

 オーストラリアのパブでよく飲まれるのがレモンライム&ビターズ。苦味のあるシトラス味のドリンク、ビターズというアルコール度44.7% のリキュールがベースになっている。ラムベースにハーブやスパイスなどが濃縮されている柑橘系の味、もともとは船酔いの薬で、イギリス海軍がジンと混ぜて飲むようになったのが始まりという。

【参考】ジンの歴史

 オランダ人が生み、イギリス人が洗練し、アメリカ人が栄光を与えた、といわれるジン。

   最初にジュニパーのお酒が歴史に登場したのが11世紀にイタリア修道士が作ったジュニパーベリーの蒸留酒。17世紀半ばにはオランダ人医師が東インドでの熱病の特効薬、利尿剤の酒薬としてジュニパーベリーをアルコールに浸して蒸溜した。これをイギリス兵が自国に持ち込み、さらに1689年にはオランダ人のウィリアム3世がイギリス国王となったことで、オランダの蒸留酒は減税、ライセンスなしで製造できるなどイギリスでジンが大流行。同時に粗悪なジンも出回り、中毒者が続出した。19世紀に連続蒸溜機が登場し、純度が高くドライなジンが作られるように。

 20世紀初頭までにアメリカで禁酒法が実施。イギリスからも闇でジンが入ってきたものの需要に追い付かず、闇バー、密造密売が横行、粗悪なジンが出回ることに。これを飲みやすくしたのがカクテル。ジンはカクテルベースとして脚光を浴び、世界的に有名になるのでした。

 ジンだけでなく、今シドニーではクラフトビールがブーム。特にマリックビルには蒸留所が集まります。BATCH BREWINGとSAUCEなどはラフ・インターナショナルが輸入しています!

シドニーのクラフトビールを牽引するBATCH BREWING

シドニーのマリックビルにあるSAUCE。IPAもヨーロッパに比べて爽やか

 NSW州のブースにいた方が、お酒は土地と水と人と空気が作る!とおっしゃっていいました。クラフトジン、ドイツやアメリカの蒸留所でも飲みましたが、香りや味はまさに千差万別。作り手の思いや、アイデアが詰まっていて、自分の好みを探すのも楽しいです。イギリスでもバッキンガム宮殿の庭園で採れた12種類の植物を配合したBuckingham Palace Dry Ginを販売しているとか。

yuma
yuma

オーストラリアのジン、ネイティブなボタニカルを使った香り高いものに仕上がってます

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